ケトコナゾールは薄毛に効くのか

コラム

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2018.03.05

ケトコナゾール(Ketoconazole)という医薬品は、水虫などの「真菌症」に適応のある「抗真菌薬」という種類の薬剤です。1976年にベルギーのヤンセンという製剤メーカーによって開発された「ニゾラールクリーム」が初めてこのケトコナゾールを含有した商品で、現在はシャンプーなどに含有したものも広く利用されるようになりました。

ケトコナゾールとは

ケトコナゾールは前述したように、真菌を殺菌する効果があります。クリームやローションなどの外用剤と、錠剤の内服薬の2種類がありますが、日本では内服薬は市販されていません。ケトコナゾールの内服薬は、肝臓への毒性が高く、それによって引きこされる肝機能障害のリスクが、メリットを上回っているとする見解が一般的で、日本で取り扱われていないのはそのためです。

「真菌」は医学用語になりますので、あまり聞きなれませんが、私たちに馴染みのある言葉で言えば「カビ」です。つまりキノコや酵母なども「真菌」の一つに含まれます。真菌は私たちの生活につかず離れずの関係といえる存在なのです。

ニズラール？ニゾラール？ニナゾール？

ケトコナゾールを含有した先発品、つまり最初に商品化ケトコナゾールクリームの　名前は「ニゾラール」で、その後出てきたジェネリック品は「ニナゾール」と、名前が似通っているため分かりにくかったりします。

また、外用薬の中でもシャンプータイプのものについては、後発品なのに「ニゾラール」という名前で販売されており、逆転していたりします。シャンプータイプのものについてまとめて見ていきましょう。

ケトコナゾールソルーションニズラール2% (Nizral)

・ヤンセン(ジョンソン&ジョンソン)社で製造・販売されている先発品です。「Nizoral」が先発品で使用される商品名ですが、商標権の関係で「Nizral」という名前で販売されている場合があるようです。

ニゾラールシャンプー　ケトコナゾール 2%(Nizoral)

・2012年8月3日に日本の富士製薬工業株式会社という製薬メーカーによって買収された、タイのOlic (Thailand) Limited 社というメーカーで製造・販売されているのが、「ニゾラール」というジェネリック医薬品です。こちらの商品名がクリームなどでは先発品に使用される「Nizoral」となっていますが、シャンプーではジェネリック医薬品になります。

ニナゾールシャンプー(Ninazol)

・こちらも「Nizoral」と同様に、タイのT.O. CHEMICALS (1979) LTD社というメーカーによって製造・販売されているジェネリックのケトコナゾールシャンプーです。T.O.社では、ほかにも発毛を促す効果がある「ミノキシジルタブレット」を製造・販売しており、AGA治療薬の幅広い取り扱いが特長的です。こちらも他のケトコナゾールシャンプーと同様に2%を含有しています。

ケトコナゾールの効果

ケトコナゾールはどのような働きをするのでしょうか。

真菌の殺菌効果

人の体には「常在菌」といって一定数が常に体の上で活動していますが、特に頭皮にはマラセチアという真菌が多く存在し、頭皮環境の変化、免疫の低下などによって増えすぎてしまうことで、皮膚炎などの症状を引き起こします。これは「脂漏性皮膚炎」といって、薄毛を引き起こす原因の主要なものの一つです。

ケトコナゾールはこの真菌を殺菌する効果があり、増えすぎた真菌を抑えることができるのです。真菌はエルゴステロールという細胞膜をもっていますが、ケトコナゾールにはこのエルゴステロールの生成を阻害することで真菌が増えるのを抑制できる効果があるのです。

脂漏性皮膚炎以外においても、水虫、ぜにたむし、いんきんたむし、カンジダ症、癜風(でんぷう)などにも適応があります。

ケトコナゾールはDHTを抑制する？！

脂漏性皮膚炎が脱毛の原因の一つですが、男性の薄毛のほとんどがAGAという悪玉男性ホルモンによって引き起こされているものであることが分かっています。脂漏性皮膚炎の原因である真菌を殺菌する効果のみでは、「薄毛に効く」とはいいづらい面ががあります。

しかし、ケトコナゾールがDHTを抑制しているのではないかと予測できるような、AGAの改善効果を示した報告があります。日本皮膚科学会が発表しているAGA治療ガイドラインでは、3つの試験においてケトコナゾールの有効性を示した結果が出たとしています。それによると

・”男性型脱毛症患者6例に,2%ケトコナゾール(KCZ)含有ローションをほぼ毎日,洗髪後10～12か月外用させた前後比較試験では,皮膚科医による改善度評価において2例が有効であった”

・”17例の男性型脱毛症患者に2%KCZローションを1日２回,６か月間外用させた前後比較試験では,皮膚科医による改善度評価において,脱毛の程度が改善傾向を示した,易抜毛性は優位に改善し,増毛の程度はやや改善以上が76%であり,有効性が示された”

・”39例の男性型脱毛症患者に対する2%KCZシャンプーと市販のシャンプー(対象)との比較試験では,毛髪直径と成長期毛率を計測し,成長期毛率(A%)×毛髪直径平均値(Dum) = pilary index(PI) と定義し評価した.その結果,2%KCZ群では使用6か月目以降PI値が増加に転じ,以降増加し続け,１５か月目以降は維持された.一方,対照群のPI値は徐々に減少し続けた.”

(以上、男性型脱毛症診療ガイドライン2010年版より抜粋)

としており、以上を根拠にケトコナゾールを使用した治療を推奨しています。まだケトコナゾールがDHTの増加を抑制するメカニズムなどは詳しくわかっていませんが、プロペシア(フィナステリド)、ザガーロ(デュタステリド)やミノキシジルと併用で治療に使用することで、より早い症状の改善が期待できます。

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