早漏治療

早漏治療

早漏の定義

早漏は正しくは早漏症でPremature Ejaculationと英語表記されています。早漏症の本来の意味は性交の際にパートナー(女性)が性的に満足しないうちに男性が射精することでしたが、現在では射精に至るまでの時間が短いことを指すのが一般的になっています。
早漏は実はまだきちんとした定義がないのが実情です。日本では男性器挿入後2分未満で射精することを早漏症と定義しています。
2008年の米国の泌尿器科学会では「男性における性機能障害で、性交時に毎回、またはほぼ毎回、女性器への男性器挿入後1分以内に射精、または挿入前に射精してしまうこと」としています。

早漏の有病率・平均射精時間

日本における正確な有病率を報告した疫学調査はありませんが一般的には日本では500万人以上の人が早漏症で悩んでいるといわれています。
海外では約2.5%の男性が早漏症であると報告されておりこれは日本人の早漏患者より少ない割合ですので日本人には早漏の方が多いようです。
早漏症の平均射精時間です。一般的な男性の射精までの時間は平均6~7分程度といわれていますが、早漏症の男性では平均1.8分で射精すると統計が出ています。

早漏の診断

早漏症の診断としては以下の条件が挙げられます。

  • 膣内挿入後、射精までに所要する時間が2分以内
  • 膣内への挿入前、挿入途中、挿入直後のいずれかの時点で、本人の意思に反して、最小の性的刺激で射精してしまい、これが反復ないし持続する状態。
  • 早漏症の結果、著名な人間関係の問題や精神的苦痛を引き起こしている状態。
  • 射精のコントロールが不能。

早漏の原因(心因性早漏)

シアリス

早漏の方のほとんどが心因性早漏です。早漏の原因について様々な研究が行われ近年はストレスや不安などの精神的な要因が原因であるという考え方が主流になってきました。
早漏は男性の機能に問題なく心因性のものが殆どです。男性の緊張や過度の興奮、ストレスや不安などから生じた脳内の神経伝達物質セロトニンの不足から射精の時間が速くなっていきます。こういった緊張や過度の興奮、ストレスや不安がノルアドレナリンの分泌を促進し射精を促しますが、セロトニンはこのノルアドレナリンの働きを抑制します。ノルアドレナリンの過多が早漏症を引き起こすわけですが、早漏の方はセロトニンが不足しているためノルアドレナリンを抑制できず早期に射精してしまうのです。セロトニンを増やすこと、ノルアドレナリンを抑制することが早漏治療のカギとなります。

セロトニン不足の病態が判明する以前は陰茎の皮膚過敏によるものとされており、包茎であるため、亀頭が刺激に弱いためだと言われてきました。そのため早漏のトレーニング法であるスクィーズ法やセマンズ法、リドカインの外用による一時的な感覚を低下させる治療や外科的な処置である包茎手術や亀頭増大術などをおこなってきました。
しかしスクィーズ法やセマンズ法の効果は疑問視されていますし、包茎手術では早漏症の改善が見られないことがたくさんの症例から明らかになっています。リドカインの外用も一時的なもので治療とはいえず防止法といったところでしょう。現在セロトニン不足を解消する内服薬での加療が主流となっています。

器質性早漏

心因性の早漏症の方が殆どですが、心因性以外に疾患を抱えていて早漏となっている方がいます。
陰茎や尿道、膀胱、前立腺などの泌尿器疾患を抱えている場合です。慢性前立腺炎、慢性尿道炎などが器質性早漏症の大きな原因だと言われています。
尿道や前立腺が炎症を起こすことで、陰茎や精嚢などの機能低下により早漏症となっています。こういった方はまず原疾患の治療が最優先です。泌尿器科を受診し原因疾患の治療を優先してください。肛門疾患でも構造上隣接しているため影響を受け早漏症となることがあります。

早漏治療のスタンダード「プリリジー」

プリリジー

早漏の主病態のセロトニン不足に対して2009年にジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnosn&Johnson)の製薬部門であるヤンセン製薬(Janssen Cilag Pharmaceutica)がダポキセチンを主成分とする内服の早漏治療薬を開発しました。プリリジーという商品名で販売されておりSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)と言われる薬剤でSSRIはセロトニンを放出するシナプスのセロトニントランスポーターに選択的に作用し、セロトニン再取り込みを阻害します。このことによって結果的にセロトニン濃度がある程度高く維持されるようになります。

2015年5月現在プリリジーの有効成分であるダポキセチンに次ぐ製剤は誕生しておらずダポキセチンが唯一の有効成分となります。プリリジー以外の早漏治療内服薬と称する薬剤は医師の裁量で処方しているものです。一部の文献などで報告があるためパキシル・ユリーフ・トラマールといった薬剤を早漏薬として処方する医療機関がありますが、当院ではパキシル以外の内服薬は早漏治療としてお勧めしていません。

プリリジーは6,081人を試験対象者(被験者)とする海外での大規模な臨床試験でIELT(intravaginal ejaculatory latency time:膣内挿入後から射精までの時間平均値)が有意に3~4倍延長した、と報告されています。プリリジーの早漏改善効果は用量依存性で、30mg服用群よりも60mg服用群のほうがより効果が強いことがわかっています。またプリリジーの24週間適時使用後の早漏症改善率は軽度~著名な改善を認めるものが72%見られ、適時使用することで早漏症自体の治癒が見込めることが示されました。

2,600人を対象とした別の論文ではプリリジーの服用でIELTが約3倍に延長され、52~58%で射精のコントロールができパートナーの満足度が2倍以上になった、と報告されています。

また、プリリジーを性行為の際に継続的に使っていくことでさらに射精時間が延長することが知られています。

このように大規模な臨床試験でもプリリジーは従来のカウンセリングやトレーニング法、早漏防止法、手術より有意に改善効果があることが証明されており現在では早漏治療の第一選択薬となっています。

従来の早漏治療薬「パキシル」

プリリジー(ダポキセチン)以外のパキシルなど他のSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)も射精を遅らせることが知られています。

パキシルはパロキセチンを主成分とするグラクソ・スミスクライン社が開発した選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)で、適応症はうつ病・うつ状態、パニック障害、社会性不安障害です。早漏症の適応はありませんが、射精障害の副作用があるため早漏症治療薬として適応外使用されています。プリリジー発売以前は従来の早漏薬として多くの自由診療のクリニックで処方されていました。現在はプリリジーで効果が無かった方に試してみるといった2番手の薬剤です。また、すでにジェネリックが販売されています。

海外における早漏治療効果のデータによると、パキシル20mgを服用した場合、治療開始前IELT(Intravaginal Ejaculation Latency Time:膣内挿入後から射精までの時間平均値)が平均24秒だった被験者が4週間の性交5時間前パキシル20mg服用で34秒~90秒に改善、また同様の服用方法での早漏症改善率は10?30%と報告されています。

パキシルの射精延長効果はプリリジーほどではありませんが、効果がある方がいらっしゃるのも事実です。しかし性行為5時間前に服用しなければならず、その延長効果も34秒~90秒程度です。また、効果が認められる確率も4~6人中1人です。ユナイテッドクリニック各院でもパキシル(パロキセチン)を処方しておりますが適応外治療ですので、しっかりとした早漏治療をご希望の方はプリリジーの服用をお勧めします。

プリリジーとパキシルを併用すればより強い早漏改善効果が期待できるのではないか、とお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。しかしプリリジーとパキシルは同じセロトニン作動性を持つSSRIに分類される薬剤ですので、併用することはできません。

SSRI、SNRI、3環系抗うつ薬、その他の医薬品でセロトニン作動性をもつもの(例:Lトリプトファン、トリプタン、トラマドール、リネゾリド、リチウム、セイヨウオトギリソウ)を使用中の方やその薬剤を中断後14日以内も禁忌となりますのでご注意ください。

噴霧タイプの早漏治療薬「リドスプレー」

リドスプレー

リドスプレーは世界で最も広く使われる局所麻酔薬であるリドカインを主成分とした、陰茎にスプレーして使用する噴霧タイプの早漏治療薬です。

リドカインには液体で注射するタイプやゼリータイプといった様々なタイプがありますが、早漏治療に用いられるものではスプレータイプやクリームタイプが多く人気があります。ゼリーやクリームの場合、リドカインの濃度は5%ですがスプレーは10%になります。リドカインスプレーは数社から販売されており「プロコミルスプレー」、「スタッド1000」などがあります。

陰茎に塗布後、約10~20分程度で陰茎の感覚が低下して、その後は1時間ほど効果が持続します。ただしリドカインを単剤で使用しても陰茎が刺激でトレーニングされ射精時間が延長するようなことはなく、感覚を落とすだけの薬剤ですので性行為時毎回スプレーする必要があります。また、リドカインが吸収された後に陰茎を洗い流さないと、パートナーにもリドカインが吸収されてしまいますのでご注意ください。コンドームを使用した場合はパートナーにリドカインが接触することはありません。

論文などで明らかにされておりませんが、プリリジー・パキシルとリドスプレーは作用機序が違うため併用療法は可能です。両薬剤を併用することでIELT(Intravaginal Ejaculation Latency Time:膣内挿入後から射精までの時間平均値)の更なる改善効果が期待できます。

リドスプレーと早漏防止コンドームなど他の局所麻酔薬を含む製剤の併用はしないようにしてください。

「ユリーフ」は早漏治療薬ではありません

ユリーフはシロドシンを主成分とするα受容体遮断薬で、その適応は前立腺肥大による排尿障害です。ユリーフはそう多くない文献で早漏症に効果あったという報告があるため、早漏治療薬として処方している医療機関がございますが、世界中のどの国でも早漏症に適応はありません。

ユリーフを服用した場合、20~40歳代の方の100%に副作用の逆行性射精(膀胱内に射精してしまうこと)が起こります。つまり若年層が服用した場合にこの副作用は必発で、この件に関しては販売元の第一三共製薬も注意を促しています。

逆行性射精が起きると、射精する精液量の減少が見られます。射精時の快楽度は射精する精液の量に比例することが分かっておりますので、精液量が減ると快楽度の低下が見込まれ、いわゆる「空打ち」となります。またED薬との併用は両剤とも降圧効果があり併用禁忌ではありませんが、併用注意薬となりますのでED合併の早漏の方には不向きです。早漏治療は若年層で治療を行うことも多いため、ユリーフの服用は勧められません。

ユリーフは効果が少なく、副作用が強いため早漏治療専門クリニックで処方することはありません。安易な服用は健康被害を引き起こす可能性がありますので注意してください。

「トラマール」は早漏治療薬として服用してはいけません

トラマールはトラマドール塩酸塩を主成分とする鎮痛剤で、その適応は疼痛を伴う各種癌、慢性疼痛などの非オピオイド鎮痛剤で治療困難な疾患における鎮痛です。トラマールを早漏治療薬として処方している医療機関がございますが、世界中のどの国でも早漏症の適応はありません。

2012年に中国のTao Wu氏らがパキシルとトラマールの早漏延長効果について比較した文献が1件あり、パキシルと同程度の早漏改善効果があったと報告されています。ただしこの論文で研究の基準を満たした症例はわずか7例で、パキシルと比較するとトラマールの方が副作用も強くトラブルが多かったようです。

トラマールはモルヒネほどではありませんが、便秘や吐き気、嘔吐、眠気などの副作用が出やすい薬剤です。また、麻薬ほどではありませんが依存性があり、過度な使用は「トラマール中毒」を引き起こす可能性があります。

トラマールは効果が少なく、副作用が強いため早漏治療専門クリニックで処方することはありません。安易な服用は健康被害を引き起こす可能性がありますので注意してください。

早漏防止・早漏克服法「セマンズ法」

パキシルやプリリジー等の内服薬での治療が行われる以前より、様々な方法で早漏治療が行われてきました。セマンズ法は内服薬以前のトレーニングによる早漏防止・早漏克服法のひとつです。

セマンズ法はパートナーが必要な早漏防止法です。

パートナーに手でペニスを刺激してもらい、射精直前になったら運動を止めて射精を我慢します。射精感がなくなったら再度運動を再開し、これを4~5回繰り返して我慢したのちに射精します。手の刺激に慣れてきたら、次にローションなどの潤滑液を用いてペニスをパートナーに刺激してもらい、同じように射精直前になったら手を離してもらい射精しないようにします。ローションを用いても我慢することができるようになれば、女性上位の騎乗位の態勢で女性器に挿入します。自分で動くのではなく、女性に動いてもらってペニスを刺激し、射精感が出てきたら中断、射精感がなくなったら再開、これを繰り返していくことで徐々に射精までの時間が長くなり、早漏を改善していくことができるのです。

セマンズ法は、心因性の要素が強い早漏の方には、女性との刺激になれることができるという点で効果が高いとされています。またパートナーの協力のもとで症状が改善すれば、パートナーの満足度にも繋がります。ただしパートナーの理解が得られない場合は試すことが難しい治療法です。

早漏防止・早漏克服法「スクィーズ法」

スクィーズ法は基本的には自分ひとりでおこなう早漏防止トレーニング法ですが、パートナーとおこなっても構いません。

自分ひとりでおこなう場合は、まずマスターベーションをおこない射精しそうになる状態までもっていき、射精しそうになる寸前で亀頭の先を押さえつけ射精を我慢します。そしてこの一連の動作を繰り返し、徐々に射精までの時間を延長させるトレーニング法です。

パートナーの協力が得られる場合は、手またはオーラルで刺激してもらい、自分ひとりでおこなうときと同様に射精寸前で刺激を止めてもらいます。パートナーに刺激してもらったほうがよりトレーニング効果が高まります。

性交を交えておこなう場合は、女性器に挿入し通常の行為をおこなって射精寸前で我慢します。これを10回程度繰り返したのち、今度は挿入せず女性上位または座位の態勢をとってパートナーにペニスを刺激してもらい外陰部にこすりつけてもらいます。射精しそうになったら止め、それを数回繰り返します。その後、騎乗位で再度女性器に挿入し、また射精しそうになったら止め、それを数回繰り返し最後に射精します。

ただしスクィーズ法は即効性のあるものではなく、またパートナーと協力して行わない場合はその効果はほとんどないとされています。

包茎手術について(早漏治療術)

形成外科の領域においては早漏の原因を3つに大別しています。

  • 包茎である
  • 亀頭が刺激に弱い
  • 陰茎が刺激に弱い

このなかで、包茎が早漏の原因でもっとも多いと考えられています。亀頭が包皮に覆われているため、亀頭に強い刺激が加わると早漏となってしまいます。また包茎でない方でも、包皮の余りが多いと勃起時に余った包皮が動くことで陰茎の刺激が強くなり、早漏となってしまう場合があります。

包茎手術と早漏治療については多くの研究がなされていますが、手術をおこなっても早漏の治療効果がないと結論付けられています。つまり包茎手術で早漏が改善するという明確な医学的根拠はありません。

EDになってから早漏になった場合

EDの方の1/3に早漏を合併することが知られております。EDの方が早漏になる原因として硬さが不足していることが原因の一つとして考えられます。陰茎は硬度が保たれていると感度が鈍くなることが知られており、逆にEDになり陰茎の硬さが不足すると感度が上がり、射精までの時間が早まります。

またEDの方は陰茎の硬さが不足するため硬さを維持しようと必要以上に激しく運動しその刺激により早漏となることが知られており、この2点がEDの方に早漏が合併する主な原因と言われておりしっかり勃起させることが重要です。

バイアグラ(シルデナフィル)、レビトラ(バルデナフィル)、シアリス(タダラフィル)などのPDE5阻害薬は勃起維持を容易にするため、結果として早漏症の改善につながると考えられています。レビトラが早漏を有意に改善することが知られていますが万人に効果があるわけではありません。ED治療薬とプリリジーは併用可能ですので併用して頂くのがよいでしょう。

※問診票は院内でご記入頂くか、サイト内からダウンロード頂けます。

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