薄毛治療の歴史【近世～現代編】

コラム

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2021.01.14

近世の薄毛対策

江戸時代の日本では育毛剤もどきが流行

江戸時代にも育毛剤が存在し、人気を博していたようです。その名も「毛生え薬」。ダイレクトに効果がありそうな名前ですが、その内容はミカンや柚子といった柑橘系の果物を原料にしていました。当時、「ビタミン」の存在は知られていなかったかもしれませんが、なかなか目の付け所がいいですね。実際に、ビタミン剤を摂取することは薄毛に効果があります。しかし、ひとくちにビタミンと言っても、柑橘類からとることができるビタミンCだけではなく、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンEも摂取したほうが効果的です。そして、皮膚からの吸収は困難ですので経口摂取する必要があります。残念ながら、江戸時代の人々が手にした毛生え薬では薄毛は改善できなかったことでしょう。

また、江戸時代の武士といえば「前頭部から頭頂部にかけて毛がないちょんまげ頭」がイメージされると思いますが、その毛がない部分を「月代（さかやき）」と言い、ちょんまげは正しくは「鬢（びん）」と言います。ちょんまげは毛量が少なくなった老人の武士の髪型を指す言葉でしたので、当人にとっては恥ずかしいものでした。そのため、人毛で作られた「付鬢（つけびん）」と呼ばれる、今で言うところの「エクステ」で立派に見せようとしたそうです。しかし、脂で馴染ませてあるだけでしたので激しい動きをするとズレることが難点でした。昔の人も苦労したのですね。武士は鬢が結えなくなると引退しなければならなかったので、現在よりも切実な悩みだったに違いありません。

近代の薄毛対策

日本人医師がパンチ・グラフト植毛の基礎を発表

近代の終わりごろに、日本人医師によって植毛治療の基礎がすでに作られていたと言われています。1939年に、奥田庄二医師が、「自身の毛髪を移植する」という画期的な発案をし、これが後の「パンチ・グラフト植毛」に通じる考えだったことから没後に注目を集めました。残念なことに、奥田医師は研究の志の途中で、第二次世界大戦によって帰らぬ人となってしまい、長きに渡り理論が日の目を見なかったのです。もし、奥田医師が生き永らえていたら、アメリカのノーマン・オレントライヒ医師よりも先にパンチ・グラフト植毛を確立していたかもしれませんね。

現代の薄毛対策

ようやく真のAGA治療薬が登場

5000年前から人類は幾たびの迷走を繰り返しながら、ようやく1960年代になりAGAの原因を突き止め、AGA治療薬を誕生させることに成功します。初めに産声を上げたのは、発毛・育毛タイプのミノキシジルでした。1960年代から用いられていたものの、その治療対象は高血圧でした。後に副効用として発毛・育毛効果が見られたため1980年代からはアップジョン社（現ファイザー社）が「ロゲイン」と名を変えて売り出しました。日本国内でも人気がある大正製薬のリアップシリーズはロゲインのジェネリック医薬品に位置付けられます。

しかし、発毛・育毛だけでは治療できないのがAGAです。脱毛抑制タイプのプロペシア（成分名フィナステリド）がAGA治療薬として認可されたのは、ミノキシジルから遅れること約20年後でした。初め、前立腺肥大症の治療薬として使用されていたプロスカー（フィナステリド5mg）が1mgの低用量だと薄毛改善効果が見られたことから、満を持してメルク社から「プロペシア」と名と容量を改め、販売されました。その後に、フィナステリドよりも強力に脱毛抑制効果を発揮するデュタステリドが開発され、ザガーロとして販売されています。

まとめ

AGA治療は現代になってようやく形に

5000年前の動物の脂から、薄毛用のカツラ、毛生え薬、そしてAGA治療薬と、人類の科学の進歩が改めて感じられましたね。もちろん、これからもフィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルを超えるAGA治療薬や施術が現れる可能性は十分にあります。もしかしたら、薄毛に悩む人がいなくなる未来もいつか来るかもしれません。