薄毛治療の歴史【古代～中世編】

コラム

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2021.01.14

薄毛が世の男性を悩ませてきたのは、なにも現代になってからではありません。遡ることができる範囲でも、薄毛の歴史は古代から連綿と続いています。歴史を知ることで現代の技術のすごさがより鮮明になるかもしれません。薄毛にまつわる人類の涙ぐましい努力の数々をご紹介します。今回は古代～中世までの薄毛の歴史を見てみましょう。

古代の薄毛対策

5000年前のエジプトが起源

紀元前1550年ごろに、エジプト医学について記された『エーベルス・パピルス』に当時のエジプトで行われた薄毛治療の方法について言及されています。パピルスというのは紙ができる前の筆写材料であり、植物の繊維を組み合わせて紙状に成型したものなので、相当古い文献であることがわかります。このエーベルス・パピルスによれば、古代エジプトでは、ライオンや、カバ、ワニ、そしてオス猫や蛇などの特定の様々な動物の脂肪を育毛剤として利用していたようです。頭皮に皮脂が詰まると薄毛になるというイメージが強い現代人からすると、まさに驚きの育毛剤ですね。

また、古代ギリシャでは医学の父ことヒポクラテスが、薄毛の治療法としてハトの糞を頭に塗りたくることを提案しました。ヒポクラテスは禿げあがった肖像画や彫刻が数多く残されており、自身も薄毛について悩んでいたのかもしれません。一方で、哲学者のアリストテレスはヤギの尿を育毛剤と考えていたようです。しかし、アリストテレスは残された肖像画や彫刻を見る限り、ふさふさの髪の毛を有しているので、真偽のほどはわかりません。そして、薄毛の歴史上の偉人で外せない古代ローマ皇帝、ジュリアス・シーザー（ガイウス・ユリウス・カエサル）は、月桂冠を被ることで薄毛を隠していたそうです。前髪の薄さをごまかすためのシーザーカット（カエサルカット）はその時代の典型的な男性の髪型になりました。

中世の薄毛対策

ヨーロッパでカツラが流行

現代でも使われているカツラですが、「薄毛を隠す」という本来の使われ方が一般的になったのは、中世のヨーロッパが始まりだとされています。古代エジプトにもカツラの文化はあったのですが、目的が異なります。もともとは、祭司たちが宗教上の理由で坊主頭になる必要があったのですが、エジプトは暑さが過酷であるため、直射日光を防ぐための防具としてカツラが作られたそうです。それが、のちに貴族にも広まり、人毛たっぷりのファッショナブルなカツラが流行ったようです。この頃はまだ宗教的な意味合いが強く、権威付けにも用いられている側面がありました。カツラの流行りはエジプトにとどまらず、ローマでも広く用いられ、中でもゲルマン人の毛で作られた金髪のカツラは人気を博したとされています。

しかし、このカツラの流行もキリスト教の台頭によって他人の髪を使うカツラが否定され、一旦廃れてしまいます。おそらくカツラを身につけた偽りの姿を神の前にさらすことは「神への冒涜」だと考えられたのでしょう。薄毛を隠したい当人にとっては、その主張こそが「髪への冒涜」だったのかもしれませんが…。そうした風潮は11世紀末まで続きましたが、12世紀初頭のイングランド王国のヘンリー1世を契機に変化が訪れます。司教から「髪を切る」ことを命じられたヘンリー1世はロングヘアのカツラを代わりに愛用したことがカツラブームの再燃を引き起こしたのです。

それから、貴族たちの間で国をまたぎながらファッションとしてのカツラがしばらくもてはやされました。そして、フランスのルイ13世がきっかけでカツラが市民層にまで広がっていきます。このルイ13世は、若かりし頃から薄毛に悩んでいたため、「薄毛を隠す」ために23歳の若さでカツラを被るようになります。おそらくルイ13世は加齢による薄毛ではなく、AGAであったと考えられます。「本格的な薄毛用カツラはルイ13世が始まり」という説が一般的ですが、長きに渡るカツラブームに乗って、ちゃっかり薄毛を隠していたのはきっとルイ13世だけではなかったのではないかと思わずにはいられません。