

入者にすら微塵も関心を払いはしない。だがジョナ田一には見えていた。大広間の正面。松太郎・竹次郎・梅三郎が居並ぶその背中側にある壁に掛けられた巨大な遺影。勿論、それは猫仏総一郎翁のものではあるのだが、本来、威厳に満ち溢れた真
っており、ジョナ田一が宿泊予定の平政ホテルに二人して泊まる事になった。新館の顔面は蒼白である。「…つまり、大向は…」ジョナ田一が無言で頷く。「何らかの手段を講じて、猫仏総一郎翁の遺言状を盗み見た可能性があります。それが個人
領する事が出来た。甲府からはローカル線と路線バスを乗り継がなくてはならない。それほど辺鄙な場所に猫仏家の本宅はある。だが、楊冠堂本舗の本社は何十年も前に東京へと移され、総一郎翁は代表権こそ無いものの会長、長女の松子は社長で
敵だ」「風俗嬢と男みたいなもんか…」「…例えは悪いが言い得て妙だ」馬山は改めて、ジョナ田一は苦手なタイプだ、と思った。だが、今の我々には必要な男だ、とも実感した。「猫仏総一郎を知ってるか?楊冠堂本舗の」「創業者にして、今は